新春御挨拶

                              井上恒夫

京都天風会員の皆さま

あけまして おめでとう存じます。

 さだめし、天風会員のみが知る、清々(すがすが)しい(なご)やかな、そして明るく(ほが)らかな、よいお年をお迎えになったことと信じます。
 常々教えられている様に、真の幸福とは、天の理法に順応し、天によって与えられた、人間としての役割を颯爽(さっそう)(はた)している姿であります。即ち、人間らしい生き方が、そのまま生き甲斐であり、真の幸福なのです。
 人間らしい生き方とは、万物の霊長としての貫録を完全に発揮して、深い気高(けだか)い愛と、しみじみとした思いやりの心を()って、自己の人生の一切のものごとを、誠心誠意処理することであります。自分の人生に与えられる事柄の一切に対して  それが好ましいことであろうと、嫌なことであろうと、楽しいことでも苦しいことでも、損得に(こだわ)らず、日常茶飯事でも  それを避けたり、逃げたり、傷つけたりしないで、それに積極的な価値と意義を与えることです。更に格言すれば、自分の周囲のあらゆるすべてのものに、生命を与えることであり、すべての人に功徳(くどく)を施すことなのです。

 一人の男が 笛を吹く
 誰も来ないが 笛を吹く
 一人が来たが 笛を吹く
 二人が来たが 笛を吹く
 十人来たが 笛を吹く
 百人来たが 笛を吹く
 何にも知らずに 笛を吹く
              (武者小路氏作)

 誰に聞かせよう、褒められようという下心もなく、笛を吹くべく使命を与えられた人は唯々(ただくりかえし)無心に笛を吹くのです。その笛が、ほんものであれば、どこからともなく、人が集って来るのです。あなたも私も、それぞれの人生の笛を吹くのです。大自然の真実の曲を奏するのです。無心に、()まず、たゆまず、笛を吹くのです。
 そうすれば、求めずとても幸福がいっぱい集るのです。その幸福は又、新たな生気を与えられて、その又周囲のすべてを光明化するのです。かくて、この世界は、平和と繁栄に()(あふ)れるのです。
 会員の一人一人はみんな笛を吹く人なのです。ひたむきに吹くこと、それが人生至上の幸福であり、絶大なものに、あたたかく抱きかかえられた安心であり、生き甲斐なのです。幸なるかな私達は、笛を吹く秘伝を己に教えられている。心身統一法と称する東西古今無二の立派な()(けん)を。
 この上は、私達は唯々笛を吹けばよいのです。あなたの立派な日常が、そのまま功徳になります。
 周囲の病める人、悩む人、悶える人、挙って(こぞって)この会に集ることでしょう。
 京都支部が、弥栄(いやさか)に発展している様を想像し、この観念は必ず現実化するという真理を信じつつ、改めて新年おめでとうと御祝詞申し上げます。

                一九六四年元旦

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